第7章 象徴技法の臨床的応用
魂の未来の場所で起こる変化
心理療法において最も説明が難しいのは、
患者がなぜ変わったのか
である。
本人も説明できない。
治療者も説明できない。
しかし確かに変化している。
象徴技法が扱うのは、 まさにこの部分である。
変化とは、
知識の増加ではなく、
魂の位置の移動
だからである。
◆ 1|症状の改善ではなく「世界の見え方」が変わる
象徴が働き始めると、
まず症状が消えるのではない。
先に起こるのは、
世界の見え方の変化である。
同じ風景が違って見える。
同じ出来事が違う意味を持つ。
同じ人間関係が違う位置に見える。
患者は、
「何かが変わった」
と言う。
しかし、
何が変わったか説明できない。
これは、
魂の位置が変わったためである。
◆ 2|通奏低音が弱まる
CPTSDでは、
心の底で通奏低音が鳴り続けている。
常に警戒している。
常に何かに備えている。
常に未来の破局を予想している。
この状態では、
記号は読めても、
意味が身体に入らない。
ところが、
象徴が働くと、
まず通奏低音が弱まる。
静かになる。
世界が敵ではなくなる。
すると身体は、
はじめて「読む」ことができる。
華厳経が
わからなくても読むこと
身体で読むこと
と言うのは、
この状態を指しているのではないだろうか。
◆ 3|夢が変化する
魂の位置が変わると、
夢が変わる。
これは非常に重要な徴候である。
夢は、
現在の自我ではなく、
魂の位置を映す。
私自身、
映画館の夢を見た。
最前列の真ん中という、
いつも選ぶ場所では、
スクリーンが半分しか見えない。
だから別の席を探した。
これは、
旧来の視座が機能しなくなり、
新しい視座が必要になったことを示していた。
夢は、
魂が未来の場所へ移動する予告なのである。
◆ 4|他者との関係が変わる
象徴が働くと、
他者との関係も変わる。
議論で勝つことよりも、
相手の位置が見えることが増える。
敵と味方という二項対立が弱まる。
「なぜ、そうなったのか」
が見えるようになる。
これは、
魂の位置が
歴史的世界の深層へ移動したためである。
◆ 5|過去が変わる
もっと不思議なことが起こる。
過去が変わる。
事実は変わらない。
しかし意味が変わる。
西田の自己限定とは、
おそらくこのことである。
未来の事実によって、
現在が限定され直される。
すると、
過去までも新しく見えてくる。
臨床で起きる本当の変化は、
過去の記憶の修正ではなく、
過去の意味の再生成なのである。
◆ 6|生き方そのものが変わる
最終的に変わるのは、
症状ではない。
人格でもない。
世界観ですらない。
変わるのは、
生きる方向である。
これが、
ケ・セラ・セラの本当の意味だと思う。
「なるようになる」
ではない。
未来の事実が、
静かに現在を導いている。
だから、
魂はその方向へ歩き始める。
◆ まとめ
象徴技法によって起こる変化とは、
- 症状の改善
- 認知の修正
- 性格の変化
ではない。
それは、
魂の位置の変化
である。
魂の位置が変わると、
- 通奏低音が弱まり
- 夢が変わり
- 他者との関係が変わり
- 過去の意味が変わり
- 生きる方向が変わる
象徴技法とは、
魂を未来の場所へ導く技法である。