華厳の海 花と水より 未来ひらく From the flower and the water of Kegon’s sea, the future unfolds.

第10章 華厳と象徴

相互浸透の臨床

象徴技法において重要なのは、

象徴を解釈することではない。

象徴がどのような運動を始めているのかを観ることである。

そのとき手掛かりになるのが、

華厳の相互浸透

という考え方である。


◆ 1|華厳は説明の宗教ではない

子ども向けの華厳経の解説書に、

わからなくても読むこと
身体で読むこと

と書かれていた。

私は長い間、この意味が十分には分からなかった。

しかし象徴技法を考えるようになり、

ようやく腑に落ちるようになった。

華厳は理解されるために書かれたのではない。

魂の位置を変えるために語られたのである。

だから説明よりも先に身体が動く。

身体が動いてから、 あとで理解が追いつく。

これは心理療法で起きる変化と同じである。


◆ 2|華厳の海とは何か

華厳では、

世界は独立した物の集まりとして存在するのではない。

一つのものがすべてにつながり、

すべてが一つのものの中に映っている。

そのため、

世界は集合ではなく、

関係そのものとして存在する。

私はこれを、

華厳の海

と呼んでいる。

海は、

境界を固定しない。

波が立ち、

崩れ、

また新しい波になる。

華厳の世界も同じである。

存在そのものが相互浸透し続けている。


◆ 3|なぜジブリに海が現れるのか

私がジブリ作品を華厳経との関連から読んできた理由もここにある。

『崖の上のポニョ』は、

単なる海の物語ではない。

海が世界を飲み込み、

境界が解体され、

新しい世界が現れる。

これは華厳の相互浸透そのものである。

そして、

百尺竿頭進一歩

という禅語とも響き合う。

崖の上とは、

世界の端であり、

同時に未来の入口である。

ポニョは海から現れる。

つまり未来は海からやって来る。


◆ 4|相互浸透は心理療法の中でも起きている

心理療法の変化は、

単に患者の内側だけで起こるのではない。

患者の夢が変わる。

身体感覚が変わる。

人間関係の見え方が変わる。

世界の色合いが変わる。

すると、

過去の意味まで変わり始める。

一つの変化が、

全体へ波及する。

これは華厳でいう相互浸透の構造である。


◆ 5|象徴は相互浸透の入口である

夢に現れた水。

花。

子ども。

海。

崖。

これらは単独の意味を持つのではない。

相互に響き合いながら、

一つの世界を形成する。

象徴とは、

意味の記号ではない。

相互浸透が始まる入口である。

だから象徴を説明して終わるのではなく、

象徴が何と何を結び始めているのかを観察する必要がある。


◆ 6|西田哲学との接続

西田幾多郎は、

華厳や天台の論理に近いものを探していたと述べている。

そして場所論は、

主体と客体の関係を超えて、

世界がどのように自己限定していくかを考える試みだった。

華厳は、

宗教的身体性の側からそれを語った。

西田は、

哲学の側からそれを語った。

象徴技法は、

臨床心理学の側からそれを語ろうとする。

三者は異なる言語を用いているが、

見ているものは同じである。


◆ まとめ

華厳とは、

世界の相互浸透についての教えである。

象徴技法とは、

その相互浸透が魂の位置の変化として現れることを扱う方法論である。

夢も、

海も、

花も、

水も、

未来の場所も、

本来は別々のものではない。

それらは華厳の海の中で互いに映し合っている。

心理療法とは、

その海にもう一度触れる営みなのかもしれない。

「華厳の海 花と水より 未来ひらく From the flower and the water of Kegon’s sea, the future unfolds.」への2件のフィードバック

  1. ドラゴン

    おはようございます。
    「絶対無の場所」を領域とする象徴の大きさを改めて教えてくださる今日の記事。
    「崖」を通してどんな世界が形成されたのか?
    私ととある精神科医の共通の世界。
    今日は、その崖に向かいます。笑笑
    何がわかるかな?

    返信 ↓
    1. 翠雨 投稿作成者

      今からなのですね!
      私も、なぜスコットランドの崖なのか知りたいと思っていました。

      画像を見せていただいて(公開)ありがとうございます_(_^_)_

      返信 ↓

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