別れさせ屋は哲学禁止

 ある女性は公立のDVシェルターに入所した日に
「○日(5日後)に退所してもらいまいます」と言われた。
お客さんが家に来た途端に
「あと30分で帰ってね」なんていうと普通友達を失いますよね。
ましてや傷つき疲れきった人にもう少し言い方があるのではないかと思いませんか。
『?』と思うまもなく、さらに聞いたのは、
「離婚して、▽県の母子寮に行けます。ちょうど空きが出てよかったですね」
「え”っ?りっ・こ・んですか。えーっ…」
「離婚しないと母子寮には入れないですから」
何たる杓子定規な物言い…
保護されている引け目を感じる人たちは驚きながらも、本心が言えない。
DVは天災みたいなものだから、被災者は避難所に保護される権利があるのだが、遠慮される。
何とかがんばって、まだそこまでは考えていないと言うと、
「じゃあどうするの?」
「もう少しお時間をいただけませんか」
「考えても同じでしょ。離婚しかないの。直らないの」
実はどんな人が入所して来ようが、離婚と母子寮行きは入所前から決まっているのだ。
保護された人は誰だって、守られると思うだろう。相談できると思うだろう。
現実とのギャップは相当なショックだろうと思う。
一時的に福祉的弱者になっただけなのに、思考能力や自己決定権まで奪われてしまうなんて、こんなひどいことがあるだろうか。確かにDV夫は手ごわいが、それはまた別な話である。
公的DVシェルターの現状は、キャッチセールスの別れさせ屋だと私は思う。

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