人魚姫は声を失い、海の泡と消えました。
王子様に会うための
足と引き換えに声を失ったのです。
魔法使いの薬がそれを可能にしました。
そのときはうれしかったかもしれません。
でもすべては失敗に終わりました。
昨日
そんな薬みたいだとハロペリドールを紹介しました。
飲み続けた20人に一人に後遺症が出るというのは
それ自体大変な確率です。
精神病院では
新聞に掲載された事故などについて
(もちろん把握できる範囲に限りますが)
追跡データをもっていたりします。
すべてかどうか知りませんが、
私が勤務したことのある病院ではそうでした。
内科や外科ではあんまりしないんじゃないでしょうか。
(難易度の高い最新の手術とかならまあ必要でしょうが)
要するに
精神科という科は
自殺や変死(死因不明)が他科より明らかに多いということです。
そんなことはもちろん現在では常識ですね。
20人に一人という数字はそのままでも怖いですが
寿命を全うしない人や消息不明の人たちの確率を加味して考え直すと
実は大変な確率になると想像されます。
月別アーカイブ: 2010年2月
飲み続けるといつか人魚姫のように話せなくなる薬があるらしい
ハロペリドールという薬があります。
抗精神病薬の1つらしいです。
院生の頃、ジル・ドゥラ・トゥレットという重症のチックに見舞われた男の子の症例を読んでいた時、
このお薬の名前を覚えました。
舞踏病のように手足が勝手に動き、汚言症も併発していて
なんか中世の魔女みたいだなと思いました。
(今なら、これは確かにかつて魔女→ヒステリーと呼ばれ、現在PTSDに変名したものだなと思います)
統合失調症のような重篤な病に使用するようなこの薬が
なぜか幼いこの男児によく効いたと書いてありました。
当時はああそうなんだとしか思いませんでしたが、
最近頭の中が真っ白になるような衝撃を受けました。
仲良くなった中国人の公衆衛生の女医さんが言いました。
ハロペリドールを長期間服用した人の20人に一人は
回復不能な遅発性ジスキネジアになるというデータがある。
それは口が勝手に動く神経障害なので、外国では禁止薬物だと言うのです。
日本みたいな豊かな国で(だから自分は日本に留学して帰化したのに)
『うっそでしょう?!』
というのが本心だが、日本での常識のあり方をだんだん学ぶうちに
思ったことをそのまま口にしてはいけないということを知り
フクザツだと言う。
彼女は母親でもあるから
日本で若い人たちに増えるリストカットという現象や
自殺の多さにこころを痛めていた。
昨年は中国をよくバッシングしてたけど
(彼女は自分にはまったく関係がないのに気にしてた)
確かにそれだけの事実はあったけど
日本はもっと凄いと
私は恐ろしくなった。
政府の自殺対策?
2006年「自殺対策基本法」が制定されましたが、
なかなかうまくいかないので
2010年2月3日 「自殺対策」が発表されました。
2月5日 「自殺対策緊急プラン」も発表する熱の入れようです。
悔い改めがあったのでしょうか?
それは疑問ですが、
(今後検証するとして)
なんとなく変わった気がするのは
どうも専門家は関わっていない感じだということです。
たとえば保健師さんとか内科医さんとかが期待されていて
はっきりは言わないけど
精神科医と臨床心理士は否認されている。
どちらも 臨床の「り」を勘違いし、
なんとなく変だと思いながらも
自分のプライドか人生か家族か地位か何かは人それぞれだろうけど
そんなもののために一番困っている人たちの本質を
否認し続けてきたから。
否認するものは否認される。
保健師さんや内科医さんは
その多くが地域密着型で
ほかの専門職より
人間をより広い視点からみるという共通点がありますね。
身体の一部分とか人生の一時期とかで判断しない。
この変化によって
誤診という二次被害は相当減るでしょう。
そういう意味で効果的です。
なかなか目の付け所はいいです。
しかし根本的な解決には
今回否認された2つの専門職の悔い改めの儀式が必要でしょう。
職業自体には罪はないんです。
先日、PTSDの大学院生と話していて
これを強調しておかねばならないと思いました。
「臨床心理学なんて100年後あるかどうかわからないような学問でしょう」
って言うから、慌てて答えました。
「いやまともな人が少ないだけで、困っている人たちは存在するわけだし、古来名前は違ってもこころの治療家はいたわけだから…」
わが国のヒロインはわがままと相場が決まっている
ポニョのしたことは
わがままで、はちゃめちゃかもしれません。
でも考えてみれば
かぐや姫もわがままを貫きました。
当世を代表するような貴公子や帝の求愛や翁たちの懇願も振り切って
月に還りました。
そして
お話全体で見ると、
ポニョはかわいく勇敢だし、かぐや姫は素敵ですね。
PTSDは近視眼的に一部分だけで判断すると間違います。
専門馬鹿になって近視眼的に診断するクリニックやカウンセリングルームに適応してはいけません。
そんなのはいい子でもいい人でもありません。
いのちを粗末にすることになるからです。
どうしても人魚姫ではなくポニョを描く必要があった
人魚姫のお話は…
人魚姫は王子さまに会いたいと思いました。
魔法使いの助けを得て
尻尾を足に変えてもらいましたが、
変わりに(薬の副作用で)声を失いました。
王子さまに声をかけることができず、
海の泡になってしまいました。
足か声かを選択しなければならない二元論の世界で閉じられたお話です。
王子さまに会う前から運命は決まっていたのです。
『崖の上のポニョ』は…
宗介に出会って家出します。
一度は父親に連れ戻されますが、
あきらめず、「足が欲しい」などとと念じていますと、
クライマックスの大事なときに(魔法使いなんかに頼まなくても)足が生えてきて、
海の上を駆け抜け宗介の家に向かいます。
要するに
①声を失わず、足も手に入り
②生き生きと生まれ変わり
③みんなに暖かく迎えられ
④みんなに勇気を与える
そんなお話です。
宮崎駿監督は
「これを見て海の上というものは走れるものだと思ってくれたら大成功!」
と言っていました。
PTSDに悩む人に言いたいです。
①あなたが受診する前から決まっているようなものは本当の運命ではありません。
②あなたが受診する前から処方を決めているような人は医療人の顔をした魔法使いです。
③ポニョのようにあきらめずに念じ続けてください。
④脱出に必要なものは必ず手に入ります。
⑤人魚姫ではなくポニョのまねをしてください!
魔女狩り
かつて【魔女狩り】なんてものがありました。
魔女なんて本当はいなかったのです。
みな人間だったに決まっています。
普通の人なら痛がるはずのものを痛がらないというような特徴を畏れたのですね。
別の文化なら神と崇めたかもしれません。
人間は自分と違うものに不安を覚えるんですね。
不安が大きすぎると耐えられなくなって、極端な行動に走る。
「魔女だ!」
魔女は火あぶりにされました。
集団ヒステリーは恐ろしいです。
現代でも心理的な意味で火あぶりにされ、社会的に抹殺されそうになっている人たちがいます。
これでは加害者も被害者もヒステリーですね。
歴史から学ぶことは案外むつかしいんですかね。
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ポニョの緊急デビュー&政府の自殺対策緊急プラン発表
ネット情報からですが…
自殺対策緊急プランを発表~政府
< 2010年2月6日 1:11 >ブックマーク 去年まで12年連続で自殺者が3万人を超えている事態を改善するため、政府は5日、自殺総合対策会議を開催し、対策の緊急プランを発表した。
発表された対策プランでは、3月を自殺対策強化月間とし、去年末にも行った全国のハローワークなどでの心の相談窓口や多重債務相談を集中的に開くとしている。また、不況の影響などで特に自殺者が多い中高年の男性に焦点を当て、2週間以上不眠の症状が続けばうつ病の可能性があるとして、医療機関の受診を勧める広報活動を大規模に行うことを盛り込んでいる。
私見ですが…
①これでは不十分極まりない
②起きている現象の問題の1つに【真似る病】があるのでさらに危険度UP
③絶望する人々の切迫感に追い討ちをかける恐れがある。
それで『崖の上のポニョ』のお宝映像の緊急公開!(昨日のTV欄を見てください)と相成ったのではないでしょうか?
線路脇にボランティアのお坊さんか子どもたちによるポニョの主題歌合唱団を派遣してほしい。
自殺するのはばからしいからやめたという人の話をTVやネットで流してほしい。
ポニョ≠人魚姫
ポニョは
宮崎駿監督のさまざまな思いが昇華して生まれたものでしょうが、
その中には、
かつて覚えた『人魚姫』の物語に対する違和感があるそうです。
3万もの尊い魂が12年も絶望し続ける異常事態に対して
メスを入れたのだと私は考えています。
いろんな物語があってよいのです。
しかし、絶望する人たちのそばに『人魚姫』しかなかったら
絶望はとまりません。
西洋人ならばキリスト教文化から生まれた『人魚姫』にこころを癒されるでしょう。
そもそも我々とは、神と人間との関係(ひいては外界と自分との関係に繋がる)が違いますから。
日本人の子どもたちには、似たような境遇(海の中から外を見てしまった)でも人魚姫とは違う、もっと感動的な解決のしかたもあるんだよと教えておく必要があります。
絶望したとき、さらに一歩前に進む勇気【百尺竿頭】を養うためです。
実は今の心理療法にもこの視点が欠けています。
青蓮華は火の中に咲く
正法眼蔵『空華』より
【優鉢羅華火裏開】
優鉢羅華は青蓮華(しょうれんげ)のことで、悟りの象徴です。
青蓮華は火の中に咲く。
節分のお豆さんだけではないんですね。
熱くて苦しくて大変だけど、そのなかに貴重な答えがあるんですね。
昨年公開された京都・青蓮院の青不動明王は燃え盛る火焔を背負っています。
ポニョの主題歌=平成のお経
日本語俗語辞典の【ポニョる】の意味につけくわえてほしいな(‘-^*)
③ポニョの主題歌を歌うこと。
ポニョの主題歌は平成のお経であることから。
ポニョは、不安と神経症の時代を生き抜くために描かれた
【世紀の公案アニメ】なので、
♪ポー如 ポ如 ポ如…と元気に歌うことは、
お経を唱えるようなものですね。
【如人千尺懸崖上樹】 ←百尺竿頭一歩を進めよ
↑ ↑
ポ如 崖の上の
…でしたね。
特にPTSDの心理療法ではキーワードになると思います。