ある日
男の子が
ふらりとやってきました。
「お母さんがさせてもらいなさいって…」
小柄でひょろりとして
気弱な感じです。
遠慮がちに作り始めます。
「これしていいの?」
「これも使っていいの?」
「好きなように置いていいの?」
会話は殆どなく
発せられるのは
お伺いばかりです。
お父さんを刺激しないように
気をつかって生きてきたのでしょう。
数日ごとにやってきて
黙々と取り組みます。
そのうち
「ぼく…
頭いいんかなあ…」
とつぶやきました。
表現がだんだん自由に豊かになり
言葉があふれかえります。
笑い声、おふざけ
楽しそうです。
入所したばかりの
不安そうな子には
「よく頭で考えてな」
とお兄さん風を吹かせます。
「みんなぼくみたいに
頭よくなったらいいのにな」
最終回には
キリンを置いて
「きいりんさん」
と本当にうれしそうでした。
元気になったことはわかるのですが
どうして「頭がいい」とか
そういうことを
よく言ってたのだろうと
気になりました。
そして
スタッフの話から
なぞが解けました。
小学校に入学したばかりなのに
勉強ができないということで
先生からこっぴどく叱られて
学校が怖くなっちゃって
転校とシェルター入所が決まった時に
ちょうど箱庭と出会ったんですね。
DVのショックで
勉強どころではなかったと思います。
先生に叱られてトラウマが複雑化しそうな危機にありました。
「ぼく頭悪い…」
一人悩んでいたのでしょう。
最後のキリンですが
麒麟という隠された神のイメージで
【麒麟児】というと
才能の優れた少年です。
この子は何も教えてくれなかったけど
あとですべてわかりました。
本人も私に何も教えてもらわなかったけど
こころから【納得】し
新しい土地で生まれ変わりました。
箱庭療法の不思議で優しい
癒しのメカニズムのお手本のような
症例です。
世間には
【発達障碍】と診断されて
薬物療法や
ドリルを与えられている子は
相当多いと思います。
誤診の一パターンで
【二次被害】と言います。
月別アーカイブ: 2010年2月
箱庭療法のDV被害におけるPTSD予防効果
DVシェルターで
箱庭は人気があります。
箱庭は1つしかないので
それに
私は一人しかいないので
順番をめぐって
時にけんかになりそうなときもあります。
しかし…
学会で発表し始めたとき
怪訝な顔にたくさん会いました。
「ムリにさせて…」
毎年発表していると
「発表のために…」
陰陽五行とか仏教とか
凄い哲学の表現があって
無意識の癒しのメカニズムに感動すると言うと、
「そういう指導してるんですか?」
(『まあ頭でっかちですこと』って表情で)
「原理なんかないと思いますよ」
「そんなむつかしいことばっかり考えて
疲れませんか?」
ユングも河合隼雄も
先行研究では
原理はあると言っているのだから
ないと思うなら
それを証明するのが筋なのに
しかも自分の怠慢で
しなくていいなんて…
不思議でしかたがない現象です。
こういう論理性のなさ
つまり悪い意味での宗教性が
学会なんて場所にはあったりします。
子どもは
ショックをトラウマ化させないために
自分の存在全体で考えながら
自分の物語を完成させているのだ
と思います。
どうしてもつくらねばならないと感じている
切実な思いを知って欲しいですね。
ただ今断食中…
【断食】というと
なんか大げさですが…
食べないだけです。
修行僧みたいに
何ヶ月もとなると
ちょっと手が出ませんが
いわゆる
プチ断食ですね。
一週間に一日
何も食べない。
【週末断食】と言う人もいますが、
今日は金曜日なので
【プチ断食】かな
事情があって
仕方なく始めたのですが
いろいろ気づくことがあって
10年ほど
習慣になっています。
名古屋刑務所刑務官による暴行事件とPTSD
名古屋刑務所で
2002年
革手錠による暴行で
受刑者1人が死亡
1人が重傷を負った二つの事件で
特別公務員暴行陵虐致死罪に問われる
などして
1審で懲役3年
執行猶予5年の
有罪判決を受けた
副看守長を含む刑務官4人の
控訴審判決が26日あり
控訴は棄却されました。
刑務所問題も難題ですね。
少年刑務所でも暴行事件がいくつか起きて
少年がPTSDに罹患しています。
犯罪には
さまざまな原因があるでしょうが
PTSDによるものは少なくないでしょうし、
犯罪を犯すことが新たなトラウマになることも
あるでしょう。
逮捕や取調べはストレスフルですから
犯罪者のPTSDは年々複雑化し続けるでしょう。
一人一人個別に対応すればよい病院でも
勤務医は過労死寸前の激務です。
刑務所という場所で
【解離】を起こした人ばかりを
【統合】していかなければならない職場は
本当は禅問答みたいな
難問を抱えているはずです。
コントロールを失った受刑者への対応に加えて
社会の暗い部分とも向き合うことが日常ならば
PTSD罹患リスクは相当高い職場であると
推測されます。
自然と軍隊式のスタイルが取り入れられ
システム上の【暴力性】が時に
暴走することがあるのでしょう。
刑務所は
あっちを向いても【解離】
こっちを向いても【解離】
あなたも【解離】
私も【解離】
【解離】だらけの空間を
号令で無理やり【統合】させた
大変な場所だと思います。
【ニューロン】掲載の統合失調症リスク遺伝子解明論文とPTSD雑感
昨日の
朝日新聞夕刊でみかけました。
名城大学とアメリカの大学の共同チームの
実験結果が
アメリカの科学誌【ニューロン】に
掲載されたそうです。
胎児期のマウスの前頭部に
遺伝子の働きを止める物質を入れて
成長過程を観察しました。
思春期にあたる58日目に
物音への反応が異常に敏感になり
認知力や記憶力の低下が起こりました。
そして統合失調症の治療薬で
回復することが
確認されました。
ドーパミンが半減しており
脳神経のネットワークが
うまく作れなかったのが
原因だそうです。
統合失調症の遺伝性と薬効が再確認されましたね。
PTSDに関して言えば
異常に敏感になれば
逆に能力の低下が起こるということが
そろそろ世間でも常識になればいいなと思います。
でないと認知力や記憶力の低下のみ見て
【発達障碍】とか【認知症】とかにされてしまいますから。
この誤診は二重の苦しみを与えます。
また統合失調症ならば薬効が期待できるはずなので
まったく効かないならば
その統合が失調している状態は
もしかしたら【PTSD】の【解離】ではないか
と疑う科学性も持って欲しいですね。
20年前に講義で学びました。
「最近、分裂病は軽症化している。
でも治りやすくなったのではなく
病が深まっている」
当時は
『確かに
子どものとき見かけたような人は
減ってるな』
と思っただけでしたが、
天国にいる先生に聞いてみたいです。
「先生、それってPTSDではないんですか?」
ストレスで死ぬこともある
奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」で
肝臓の腫瘍(しゅよう)摘出手術を行い
男性(当時51歳)を死亡させたとして
業務上過失致死容疑で逮捕された
元主治医塚本泰彦容疑者(54)が
死亡しました。
起床後
洗面を済ませて留置場個室に戻ったあと
大きないびきやうめき声が聞こえ、
署員が見に行くと
倒れて意識がなく、
心肺停止状態で
病院へ救急搬送したあと
亡くなったようです。
塚本容疑者は逮捕後、
食欲不振と不眠を訴えており、
ここ数日は、
睡眠、食事をとれない状態が続き
24日には
脱水症状と診断され、
病院で点滴と流動食を受けていたとのことです。
ストレスの可能性が高いですね。
急性ストレス障害でしょうか。
よくストレスで死ぬことはない
とか言いますが、
もしかしたら
そんなことはないかも?
一人暮らしの自宅で
食べられず
眠れなかったら
衰弱死しますよね。
キェルケゴールは
絶望は死に至る病だと言ってるし…
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朝日新聞『獅子頭』第四話 『崖の上のポニョ』っぽい?!
時が経ち、
三話で赤ん坊だった【二順】
の父親は
退役軍人の兄のおかげで
貧しい農村を出て
都市の雑技学校の
食堂の調理師になった。
家を出る前
農民の父親に
母親が調理の特訓をしようとする。
ダメだダメだと
厳しいことを言う母親に
父親は
野菜を油で炒めて
塩と胡椒を加えるという
基本はどこでも同じだし
職場では
油がふんだんに使えるし
味の素もあるだろうから
大丈夫だと返す。
この家では
ろうそくの明かりのもと
きゅうりの味噌漬けと粟のご飯だけの
食事が普通だ。
第一話で【文革】に触れていたが、
【文明】というモチーフが
底に流れているような気がする。
中華料理と言えば
【火食】のイメージだが、
二順の家のように
火を使う以前の文化水準があり
易学の
【先天易】と【後天易】の間に
【火食】がある。
火を使うか否かで
哲学ががらりと変わってしまう
ということを
昔の中国人は知っていたのだ。
この哲学は
もちろん
【陰陽五行説】
お釈迦さまの掌のように
あらゆるものを乗せることができる。
つまり、説明することができる。
中国文化も政治も食事も
医療も占いも
すべての基本に
【陰陽五行説】がある。
さらに
【味の素】
これは世界を席巻している。
外国に行けば、
その国の味を楽しみたいと思うが
ベトナムでもタイでも
味の素のびんや広告を見かける。
「これがないと」
と言われるとちょっとショック…
みんな同じ味になってしまう。
英語で説明すると
なんだか内容が軽くなってしまうものだが
味の素で日本もそういう文化破壊の
片棒を担いでいる。
原始的な生活から文明化へ
そしてグローバルスタンダードへの習合
易もいつかまた
後天易から進化させなくてはならないのかもしれない。
二順が兄に
父の行った【雑技学校】の【雑技】って
何?と聞くと、
サルみたいに木の枝を歩くことかなあ
と答えた。
木の枝といえば
【如人千尺懸崖上樹】
危機に見舞われて克服していくわけだから
『獅子頭』も
『崖の上のポニョ』かな…
トラウマの昇華 安藤美姫選手の場合
バンクーバー五輪の
安藤美姫選手は
「レクイエム(鎮魂曲)」を
選び
見せ場となるステップの直前
空を見上げ
十字を切りました。
8歳で父親を亡くし
3年前に祖母を亡くしたので
レクイエムの調べは
胸に響き
最初はつらかったそうです。
泣きながら
振り付けし、
これは自分にしかできないと
覚ったそうです。
そうすると
悲しみが
スケートによい力を与えてくれた
と語っています。
トラウマに
どう向き合うか
そして向き合うとどうなるのか
シンプルな説明がここにあります。
安藤選手の個性化の過程を
垣間見せてもらいました。
逃げずに
負けずに
念じて
跳ぶ
ポニョみたいでもありますね。
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元薬物中毒のチャーリー・シーン 予防のためにリハビリ施設に入院
昨日のニュースですが
チャーリー・シーンさんです。
ドメスティック・バイオレンスで起訴されるなど、
私生活が荒れていましたが
リハビリ施設に入院したそうです。
WENNによると
元薬物中毒として知られるチャーリーは、
予防対策のために入院をしたと発表しています。
テレビドラマ
『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』は
しばらく休みだそうです。
プライバシーを
尊重してくれるよう
またこれ以上のコメントを出す予定はないと
声明を出しています。
予防入院なんて
凄いですね。
わが国では
【犯罪】に過ぎず
【自力】で治すことが求められますからね。
治療対象
という
意識は薄く、
国立のが1つと
民間のダルクくらいかな…
これは自殺予防にもなりますね。
DV被害者にとっても
大きな救いです。
DV加害者には
薬物依存のケースもありますが
わが国では
野放し状態ですからね。
狭い日本でどこに逃げても
恐怖感は尋常ではありません。
依存患者(元ですが)の
人権意識も高く
しっかりしています。
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PTSDの心理療法雑感
心理療法にも
いろいろな方法があるので
何も
かさぶたをムリにはがすような
痛々しい方法に
律儀に
固執する必要はない
というのは
事実だと思います。
しかし
気をつけなくてはならないのは
【暴露法】だから痛々しくて
【箱庭療法】や【夢分析】だったら
傷口に優しいとは
言えないということです。
かぐや姫の話をまったく聞かず
わがまま扱いした挙句
象徴表現を
常識で解釈し
個性化させず、
適応論に嵌め殺したケースは
【箱庭療法】でした。
厳密に言えば
箱庭療法とは呼べないのですが、
【箱庭療法学研究】に掲載されてますので。
ラポールを形成し
痛みを共感しながら
ゆっくりゆっくり
行う【暴露法】のほうが
もしかしたら
傷口に優しく
効果的ということも
ありうるでしょう。
要は
心理療法家の人間性でしょうね。
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