月別アーカイブ: 2010年5月

アンナの症例③ラポールの形成

治療者は
これらの障害には
精神的な原因があると考えた。

なにかにひどく苦しめられているが
それについて何も言うまいと
決心しているのではないか
話してほしいと

率直に促すと

このときから彼女の症状は
徐々に改善し
そのうち病床を離れることができた。

ラポールの形成
と言います。

心理療法の基本中の基本です。

こころが自由に交流している
状態です。

箱庭療法のカルフさんなら
【自由にして保護された空間】と
言うでしょう。

そっちがわかりやすいかな?

自分の感じたことを話しても
大丈夫だという安心感がある
状態で

「黙ってしたがってください。
転院は自由ですよ!」
なんて叱られるおそれのない
関係です。
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アンナの症例②治療開始後の瞑眩反応としてのヒステリー症状

治療開始後

症状はますます悪くなり
そのうち
視点が定まらなくなり
ついには
寝込んでしまった。

後頭部の痛み
奇妙な視覚障害
四肢の麻痺
感覚の消失など
さまざまな症状がおこってきた。

さらには
彼女の意識状態は
分裂

一方の意識状態の時は
穏やかな性格なのに

それが突然

別の意識状態に変わると
周囲のことがわからず
幻覚を見て興奮し
汚い言葉をはいたり
ものを投げたりするようにさえなった。

しだいに
ひどい言語障害があらわれ
話す言葉はばらばらで意味不明
時には2週間まったく無言のこともあった。

ヒステリー症状のオンパレードです。
分裂は【解離】としたいところ
ですね。

誤診し放題の危険性
わかりますか?

発達障害
統合失調症
ジル・ドゥラ・トゥレット(チック)
緊張病
器質性精神障害
人格障害
うつ病
適応障害

最近の朝日新聞だと
統合失調症と診断されて
数日後発達障害ってのも
ありそうです。

いずれにせよ
投薬はまぬかれないでしょう。
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アンナの症例①PTSDの発症

これは
神分析誕生のきっかけとなった
事例です。

21歳で発症した聡明で意志の強い女性

人への同情心に富み
他人のために働くことに
なによりの生きがいを感じながら
きびしい家庭に育った。

単調な生活のなか
白日夢に熱中することが多かった。
 

愛する父が病気
(胸膜周囲膿瘍)となったので
彼女がつきっきりで看病するようになり

看護しているうちに
彼女はだんだんと衰弱し

激しい神経性の咳が出るようになったのを
きっかけに受診し
治療を受けることになった。

性格が悪いわけでも
発達障害でもないですね。

咳を
神経性と見抜く力が
治療者にはありました。
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仮面更年期障害とPTSD

55歳の小柄な女性

5年以上ほてり&発汗がひどく
生活に支障がでており

発達障害を疑われるほど
物事が覚えられない

対人関係においては
常に阿修羅のように勝ち負けに
こだわり
相手を言い負かすことしか
考えていない攻撃的な性格が
顕著である。

しかし
家人からの情報では
友達がいない」とこぼし
夜も眠れないようである。

症状悪化の前には
経済的に困窮しているにも関わらず
タワーマンションを始め
さまざまなものを即決購入
しては、数日後青ざめることを
繰り返している。

あと2年で死ぬと言う言葉を
繰り返し
健康を気遣う同年齢の女性たちの会話には
「好きなもん食べたらええんや!」
と大声で怒鳴り込む始末。

人格障害も疑われそうである。

しかし
話をよく聞いていると
子どもの時
離婚により困窮した母親に
心中を迫られたこと
その後生活は豊かになったが
母親が57歳で死亡したことを
なぜか自慢げに繰り返す。

抑圧していた
幼少期の死のトラウマが
母親の亡くなった年齢に近づき
火山のように活動し始めたのではないかな
…と見立てている。
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遮断機がよく故障するJR阪和線

電車がよく止まることで有名な
JR阪和線ですが

最近は
路線変更せざるを得ないような
長時間の待機に
遭遇していません。

そのかわり
「踏み切りの遮断機の点検のため
発車が5分程度遅れます。
お急ぎのところ…」

というようなアナウンスが
増えたように思います。

運転手さんの学習効果でしょうか。

必要以上に
前方に注意し

早めにストップする。
線路に座っている人にも
慣れて
いちいち驚かず
スマートに退避を促し
何もなかったように運転再開する。

…あくまで想像ですが。

愚痴の1つも言わず
慣れるべきでないものに
慣れる過剰適応

…心配です。
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文豪の象徴漱石が提示する世紀の公案小説『門』とPTSD

PTSD研究家翠雨の日記

ロンドンに留学して
イギリスの文化、文明に圧倒され
心身症を病んでのち

日本人とは何か
誇るべきものがあるとすれば
それは何なのか

そんなこと
ばかりを考えつめていた
漱石の無意識は

漱石を苦しめている心身症(PTSD)が
いずれ日本で大流行すると感じ

漱石に
この小説を書かせたのだと思う。

主人公は
『崖の上のポニョ』ならぬ
『崖の下の宗助』なのだから
   ちなみにポニョを助けるのは宗介

【如人千尺懸崖上樹】
(百尺竿頭のほうが通りがよいだろう)
という公案は
数ある公案のなかでも
最もPTSDを切実に提示した
公案と言ってよいだろう。

あなたは高い崖の上の木の枝にかじりついている。
「あなたはだあれ?」と聞かれて
答えなければならないが、
普通に答えたら墜落して死んでしまう。

トラウマを理解するむつかしさと
直面する恐怖心を見事に
示している。

しかし
この公案に答えることなしには
もはや生きていくことはできないのである。
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夢十夜『第三夜』子殺しとトラウマ

6歳になる自分の子を
背負っている。

目がつぶれているが
(見えない)
道をよく知っているし
勘が鋭くて
恐ろしくなる。

こんなものを
しょっていては
末恐ろしいから
置いてゆこうとしたら

重くないかと聞いてくる叫び

重くないと言うと
「今に重くなるよ」

恐ろしくも妙な会話のなか
100年前に犯した殺人を
思い出す。
同時に背中の子どもは
石地蔵のように重くなった。

この子どもは
かつて無意識のうちに
抑圧し
忘れ去られたトラウマでしょう。

常識や分別と違うレヴェルの
存在で

夢見手のことを恐ろしく知っているし
何とか存在に気づいてもらおうという
ある種の【うらみ】がある。

抑圧したままで
同じ間違いを犯そうとしている
(自分をまた捨てようとしている)
夢見手に

そろそろトラウマを直視せよと
警告しています。

子殺し・子捨てのモチーフには
このような意味も
あるように思います。
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三浦綾子『塩狩峠』の犠牲的精神

結納のため札幌に向った鉄道職員
永野信夫の乗った列車が
塩狩峠の頂上にさしかかった時
突然客車が離れ
暴走し始めた。
声もなく恐怖に怯える乗客。

信夫は飛びつくように
ハンドブレーキに手をかけた…。
明治末年
自らの命を犠牲にして
大勢の乗客の命を救った
一青年の
愛と信仰に貫かれた生涯を描き
人間存在の意味を問う長編小説。
敗戦後、肺結核と脊椎カリエスを併発して
13年間の闘病生活の病床で
キリスト教に目覚め
1952(昭和27)年受洗した
三浦 綾子の作品です。
三浦綾子の病も壮絶です。
自らが得心ゆくような
神と出会わなければ
生きてゆけなかったのでは
ないでしょうか。
生きておられたら
PTSDから
鉄道自殺する人々の
苦悩と絶望にも
理解を示されたことでしょう。
この世でも傷めつけられ
命を犠牲にしながら
死後も鞭打たれつつ
人類を救うための
何らかのメッセージを
掬いとられたことでしょう。
三浦さんなき今
この方々の死を
無駄にしたくはありません。

いいなぁ 合理化しない 『着物な毎日をすごす 事務局長ブログ』さん

Ameba(アメーバ)じゃない
よそのブログなんですが
この事務長さん
目指すは
赤ちゃんからこども
若い人
現役世代
お年寄りまで
すべての人間を大切にする社会。
理不尽は許しません。
忙しそうに見えて
実は好きなことを追求する日々。
このごろ毎日着物生活してます。

という社会活動家ですが
いつもパワフルです。
ダウンこの記事には大変勇気付けられました。
2010.05.10 *Mon
前に進むために
いろんな人たちと話をして会議をしてお喋りをして……思う。
なぜ出来ないということを正当化するのだろう。
お金がないから
時間がないから
力量がないから
………
まあ、やれない理由なんていくつでも挙げられるだろう。
でもそのまま出来ないままで終わったら
多分次に来るのは
守りであり、後退しかないのではないか。
わからないことも正当化する人がいる。
わからないのであれば勉強すればいいではないか。
誰でも最初はわからない。
わからないままで放置していることを恥じてほしい。
今以上の力をださなければ新しいことはできないし前には進まない。
そしてどうすれば今以上の力を出せるのかを考えるのが知恵というものだ。
私は
前に進みたいし
誰もやっていないことをしたい。
だから
お金がないとか
時間がないとか
力量がないとか
……絶対に言わない。
学会で
「翠雨ワールド」だとか
「あなたにはできるかもしれないけど
普通は無理ですよ」とか
「採算あうんですか?」とか
変な発言する人がいたら
使わせてもらおぅっとニコニコ

アンナの症例⑥ 精神分析による『ヒステリー研究』の誕生

以上は
ブロイアーという人が
行った症例です。
フロイトはこの症例の病歴と
ブロイアーの行った新しい治療法
(カタルシス療法)に
非常に興味を覚え
ヒステリーの病因と治療法について
まとめるように勧めました。
当時は催眠法が流行していたのですが
何もから暗示をかけなくても
クライエントのから
抑圧していた思いが
吐き出され
抑圧していたことを
自覚できれば

治癒すると
分かったのです。
こうして出来上がったのが
ブロイアーとフロイトの共著
『ヒステリー研究』
(1895年)です。