1992に出版された本ですが
伝統的な
フロイトのヒステリー研究を
再発見し
現代的かつ具体的な事例に
(精神分析のネガティブ思考
了見の狭さや
カビ臭い堅苦しさを取り除いて)
書き直した点が
優れています。
これだけで
十分評価される業績でしょう。
問題は
治療法ですね。
「PTSDの
薬物治療の研究は
まだ揺籃期」だったので
しかたがないのですが
帰還兵の研究では
「若干の抗鬱剤が
中程度の効果を示した」
「一時的に
脳のセロトニン系に作用する
新しい抗鬱薬も
かなり見込みがある」
ベンゾジアゼピン等は
「トラウマの直接の余波が収まらない時に
短期間利用するのは有益である。
(依存症になる危険がある)」と
書かれています。
薬物治療以外では
精神分析療法的なものについては
あまり書かれていなくて
「暴露法」的なものと
「おしゃべりグループ」のようなものの
提示でしょうか。
(それぞれの
よさと弊害、注意点について
詳しく書いてあるところは優れています)
今の日本では
前者は不人気で
後者が全国的にいくつかできていますが
うまくいっているグループのリーダーは
ハーマン理論を展開しているように
思います。
ハーマンは
もちろん言葉で介入しますが
フロイトよりはユング的に
イメージや象徴を大事にしながら
歴史や社会全体を見据えて
感覚的に
傾聴・対話しているフシがあります。
そして
哲学的なんです。
「○○療法」なんてのはどうでもいいことで
そこに通底しているとてもシンプルなこのあたりの原理を
センスの良いリーダーたちは
ハーマンを読まなくても
掴んでいるのだと思います。
言葉では伝わらない
宗教の伝統みたいなものがあります。
これが
歴史的身体的に考えるということなのでしょう。