著者は
臨床心理学の歴史を丹念に調べ
認知行動療法のようなものよりは
芸術療法がよさそうだとの目星をつけ
河合隼雄の弟子の箱庭療法に触れ
中井久夫と風景構成法までしながら
最後に
「個人的なことを書くことをお許し願いたい。
私はずいぶん前から
自分がなんらかの精神的な病を抱えていることを
自覚していた。
ときどき風景が止まって見える。
睡魔が襲う。
重いときには
テレビのお笑い番組で笑えず
毎朝毎晩読んでいた新聞を読めなくなる」
「物事の判断力が鈍り
わけもなく涙がこぼれる。
このままでは死ぬしかないと思い
首をつろうとしたこともあった」とカミングアウト
向かった先は
何と
「町の小さなクリニック」でした。
診断名は
「双極性障害Ⅱ型」で
微量の気分変調薬で落ち着いているそうです。
「この分野を取材し
専門機関でも学んでいたから
ある程度
それらの症状が何によるのかはわかる。
しかし
私は自分にその診断が下ることを避けてきた」
多くのPTSD患者さん同様
診断名にはコンプレックスがあるようです。
(複雑な感情が絡み合ってしまい
正しく認識しようとしても
妨害が入る)
副題「Silence in Psychotherapy」は
セラピー中の沈黙が大事だという意味で
書かれているのですが
優れた調査能力で
実物に触れても
その人の思考を脱線させてしまい
結論を書かせてくれない
心理療法における
圧倒的なタブーが
浮き彫りにされているように感じました。
まとまりがないとの評価もありますが
1つの貴重な実験記録だと思います。
なぜ
今だに心療内科に行く人がいるのかについて
知るヒントになるでしょう。